働き始めてからの陸上事情。
4月中は何かとバタバタしてて、というか社会人的なリズムに慣れてなくて、なんとなく時間が開いたな~と思ったときに近所の河川敷で走るというスタイルをとっていた。河川敷といえばジョギングみたいなところがある(と思っている)のに対し、天邪鬼で意識の高い短距離走者である僕は専ら坂ダッシュとタバタ式インターバルに勤しんでいた。このスタイルを貫いていくことになるかもしれないと思い、飲み物やタオルなんかを入れるため用のバックパックを勇み足で買ってしまった。
5月に入って生活が少し落ち着き、ここらで真面目に練習環境整えたいなぁと思って調べてってようやく代々木公園陸上競技場(織田フィールド)が平日の夜に無料開放していることを知り、そこからは週1~2回のペースで退勤後に走りに行くことに。荷物は飲み物やタオルだけでなくランシュー、スパイク、ジャージ一式と大幅に増えてしまい、容量が小さいバックパックはお役御免になってしまった…いやさすがにたまには使ってあげよう。
織田フィールドはさすが都会のど真ん中で無料開放してるだけあってとても混んでいる。大学時代の0.7倍ぐらいの広さの競技場に、大学時代の10倍ぐらいの人がいる気がする。走るときには中学生みたいな気分で「○レーン行きまーす」という声掛けがほぼ必須。恥ずかしくても身を守るためには仕方がない。
そして設備も今まで走った競技場で一番つらいものがある。スタブロやハードルなんてもちろん使えないし、ところどころタータンが剥げている。まぁ直す暇すらないんだろうなぁ…
大学時代が恵まれすぎていたのもあるけど、今の環境は満足に走るにはちょっと不満が多い。とはいえ、全く知らない人の走りが眺められる環境ってのもなかなか悪いものではない。
なんの練習をしているのかと言われるとはっきりとは答えられないけれど、一応マラソンに転向する気がまったくない意識の高い短距離走者なので、短距離の練習をしている。
実は6月20日の早大同記録会に100mと200mでエントリーしてしまったので、今はそれに合わせて練習しているところである。とはいっても、その中身はひじょーに適当である。
流れとしては、何も考えずに競技場に行き、ウォーミングアップを手短に済ませつつ何がしたいか漠然と考え、それを満足するまでやる。レストは「そろそろ大丈夫かな」と思うまで。
「この前スピード上げてたから今日は持久系足りてない気がするな~」みたいな気持ちで考え始め、「昔200-150-100とかやったけど間にもうちょっと足したら面白そうな気がする!」という方向に進んでいく。そのようにして、「60×2、80×3、100+300」とか「200-150-120-100-80-60-40」とかいう小学生のバイキングみたいなメニューが出来上がり、ひとしきり走り回って、満足して、帰る。
一昨日つくばに行って陸同の練習に顔を出してみた。
300レペがあったのでガチバトル。さすがに学生たちには刃が立たなかったけど、38秒を切るか切らないかぐらいのところで走れて一安心。ひとまず最低限の走りは出来ている感触。
しかし人と走ると色々と思うところがある。自分1人でやってきたことの評価が突き付けられてしまうということとか、やっぱり競走楽しいよねとか。
そういうところを考えると、クラブチームとか探そうかなというのも、合わせて考えてしまう。
ぶっちゃけ今の社会人生活の延長線上に豊かな人脈というビジョンがあまり見えないというのもあり、プロぼっちとして名を馳せてきた自分としてもなんらかの新しいコミュニティを模索してってもいいかなという気持ちがある。
それにやっぱり人と関わって客観的な評価の中にさらされないと、そもそも何も生まれようがないでしょというのもある。1人で走って1人でなんか答えに辿り着いたような気になって、というのはただのオナニーだし、気持ち悪い。
やはり競い合って、切磋琢磨して、己を高め合っていくというのは非常に真っ当なあるべき姿というものだろう。
しかしこれはやはり今までの焼き増しという気がしてしまう。
ある時間にある場所に行くと同じ志を持った仲間がいて、メニューもあって、あるべき姿に収まっていって…というのは、思考停止的な心地よさがある。それに身を委ねていると、いつしか陸上に支配されているかのような感覚に陥る。
以前「アスリート」について記事を書いたことがある。自分は割と享楽主義的なところがあるので、この手の恣意的なすべき/せざるべきに追い立てられるのが苦しく感じてしまう。たまには不摂生をしたいし、それに罪悪感を覚えたくない。
それに比べて今の練習は、17年目のシーズンにして最も陸上を選びとっていると言える。
社会人という地位を得たことで、今までの人生で最も陸上をしないことの正当性が担保されている。にも関わらず自分は陸上を選びとり、今自分が最もやりたいメニュー通りに走る。これまで感じたことがない、陸上を支配しているような感覚がある。
何かに追い立てられたり責められたりすることなく、生活の中に埋め込まれているような陸上というのも、これはこれで悪くない。なにより気持ちが軽い。
…しかしこのまま走っていった先には、結局独りよがりな「道中」しかない。辿り着くべき終着点がないまま、話は元に戻る。
結局この話は択一ではなくて、どのように折り合いをつけるかということでしかないのだけれど。