小6、80mH:15"15
中3、110mYH:16"61
高3、110mH:出場なし 400mH:60"03
大1、400mH:58"06
大3、110mH:16"40
どうしようもないほどに僕は凡人だった。
例えば、100mで11"5を切る。
例えば、200mで22秒台を出す。
例えば、110mHで15秒台を出す。
僕の中ではそれが「速い人」の条件で、彼らは自分からは遠く離れた、雲の上の存在のように思えた。
中学の頃から、僕は自分の短距離走者としての身体的素質は乏しいと思うようになった。
天性のバネとか才能とかセンスとかそういうものは自分にはない。「速い人」に憧れていても、心のどこかで自分はそうはなれないのではないか、「速い人」の領域に辿り着くために必要な物を自分は獲得し得ないのではないか、そんなことを思うようになった。
高校で「身体的素質で劣るとしても頭を使って技術で上回ればいい」と考え方を改めるようになっても、それで絶対的に足りないものを補いきれるのかという疑念は拭い切れなかった。
大学に入ってもなお。
今年の1年生はハードラーが多い。
110mH15秒台のベストを持つ人もかなりいて、今まで通りのほほんと走っていてもクラ対には出られないという状況。
あぁ、このままでは「速い人」に蹂躙されてしまうのか…
しかしまぁトラックの上では速ければ正しいわけで、挑戦者という立場にある身としては真摯な姿勢で学ぶことしか出来ない。並んで走ったり、アドバイスをもらったり…
前回書いた悔しいという気持ちを持ちながら速い人から学ぶのはこれ以上ないほどの効果があった。
5/17のスプリングカーニバル、200mの後に走った110mHで16"34(0.0m)でベストをちょっぴり更新。いつも2本目でヘタレるのに、しかもまた前半4台ぐらい浮いて失敗レースかと思ったのに、「なんかベスト出ちゃった」。
それにしても去年のクラ対だってスタートでミスってその後全部台無しにしてることを思えば1台目のアプローチが諸悪の根源であることは疑いようもない。どう修正していくべきか、要は浮いちゃうのがいけないわけだから…
あれこれ考えた結果、浮く=高く跳ぶ原因として踏切位置がハードルに近いのではないかという仮説を立てた。遠くから踏み切れれば低い軌道でハードリング出来る。遠くから踏み切るためにはスタートからの8歩のストライドを調整する必要がある…
しかし、自分の中で「110mHも"走る"競技であることに変わりはない=8歩先にハードルがあるとしても100mと同様の加速イメージで走るべき」というのがあって、110mH用に刻むようなスタートの練習をするのは巨視的に見れば必要な技術なのかもしれないけれどやや抵抗もあるというジレンマがあり…
更に考えた末、スタートで手を置く位置を拳1個分下げるという案に行き着いた。つまり自分だけスタートラインを擬似的に後ろに下げ長い距離を走ることで、100m同様の加速をしながらも8歩目でスイートスポットを踏めるという作戦。女子の100mHで井村久美子さんがやってたみたいな話を聞いたような。自分はそんな大層なスプリントがあるわけじゃないけど、現状それが一番いいように思えた。
何回か試した結果1台目で浮くケースはかなり減って、これで前半の加速が削がれることが少なくなればあるいは、といったところで5/31の筑大競を迎える。
天気は快晴、気温は夏かよってぐらいに高く、筑大競にしては珍しく風も穏やかという絶好のコンディション。体調も悪くない。
10時20分に始まったレース。入りは理想とはややズレがあったものの今までで最も失敗したという感覚が薄かった。そのまま良いリズムで刻むことが出来、16"02(-0.2m)とベストを大幅に更新することが出来た。
しかしこのタイムを見て最初に沸き上がったのは喜びではなく悔しさだった。15秒台が、尊敬する先輩が、すぐ目の前まで迫ってきたのに、あとほんの僅かだったのに…
そんな自分への蜘蛛の糸というかなんというか、今回の筑大競は100mと110mHに限ってタイムに納得がいかなかった人の救済として2次レースが用意されており、これを逃す手はないと考え出場を決意。
レースは2時間後。気温も上がってるし疲れも少しあったため、アップは軽いストレッチとシューズで50mぐらい流しただけ。スタブロ合わせでもハードルを1台も跳ばず、ただ1本に懸ける。
隣のレーンには練習で競い合ってた1年生が来た。正直練習や1本目の走りを見る限りでは勝てそうもなかったけど、それでも負けたくないと思った。
スタートして、1台目を史上最高の形でクリアして、それなのに隣に半身分先行されて、でも負けたくない一心でそいつと同じリズムで、今までにないスピード感で、インターバルを刻んでいって、10台目を跳んだ後バラバラなフォームでゴールに突っ込む。試合の時にしか味わえないこの瞬間が、110mHという競技で一番好きな瞬間だなぁ…
走り終わって、速報板に書かれた自分のタイムは、
15"82(+0.2m)とあった。
たったの2週間で、勝ちたいと思っていた先輩のタイムを抜き、1年生のときに目標としていた同好会十傑に載ることも叶い、そしてなによりも16年間の競技生活で夢見ながらも心のどこかで諦めていた「速い人」になれた。
身体的素質がないとしても頭使って考え抜いてそれを補うというやり方と、後輩に負けたくないという闘争心。さながら今までの積み重ねが結実したかのようだった。
あぁ、本当に、今まで陸上続けてきて良かった。
…シーズン半ばなのに終わったみたいな書き方になってしまうのもどうなんだ。
しかし実を言うと大会後から腰~尻あたりが絶賛筋肉痛で全然動けていないという。次の大会まで1ヶ月ぐらい空くのが救い。
壁を突破したらしたで次の壁が用意されているのが陸上のすごいところで、また後輩もものすごい勢いで突き上げてくるとあっては燃え尽きている暇もない。
「速い人」になった日は、始まりの日でもあった。
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COMMENT
No Title
クラ対にも出場しました。
この日記を見て勇気とやる気の二つが私の心に芽生えました。
200mにクラ対で出場したのですがブランクもあり結果は散々で
全体の下から数える方が早いほど遅かったです。
来年は準決勝にいってやると思いながら心の中では本当にいけるのだろうか?自分にはどうせ無理だ。。。なんて思っていました。
しかし投稿者さんの経験談を聞き自分も投稿者さんのようになれるのではないかと感じました。
もちろん投稿者さんの死にもの狂いの練習の賜物であることは承知の上で私も投稿者さんのように努力したいと思います。
私は1年後に準決勝、2年後に決勝にいけるよう
努力することを誓います。
必ずや実現させます。
きっかけを与えていただいて有難うございます。
頑張ります。。。。。。
No Title
僕の周りにも大学で自己ベストを更新した人はたくさんいて、やっぱり高校以降も続けていれば伸びる余地は残されているんじゃないかなと思います。
拙い文章ではありましたがきっかけになったのであればこちらとしても幸いです。クラ対でのご活躍を願っています!